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Dr.新原の健康講座

2018年2月19日 月曜日 10:04

血尿の話

尿の色がおかしいなと思ったことはありませんでしょうか。尿の色は、透明からやや黄色がかったものが正常ですが、赤っぽかったり、コカ・コーラのように黒っぽかったり、時には茶色くなる場合もあります。当たり前のように見ている尿ですが、尿の色、中身を調べることにより健康状態がわかります。というわけで、今回は尿の病的変化の一つである、血尿についてお話してみましょう。

血尿というと、どうしても赤く染まった尿を想像してしまいますが、実はその大半は肉眼では見えない、少量の血を含んだものです。そうとは言え、肉眼で見えるものも少なくありません。そして、非肉眼的なものを合わせると、その頻度は私たちが考えている以上の数字です。ウィキペディアによりますと、「健康診断による潜血陽性率は大学生で4~5%、40代は男6%女10%、60代は男11%女24%、80代以上は男17%女29%である」というデータが表示されています。

原因としては様々な疾患が考えられますが、膀胱炎の占める比率はとても高いです。膀胱炎になりますと、炎症のため膀胱の粘膜から血が滲み出やすくなるからです。大抵の場合は非肉眼的ですが、尿の色がやけに濃くなったように見える場合もあります。そのほかに原因として考えられるのは、その他の尿路の疾患です。尿路というのは、腎臓、尿管、膀胱、尿道をひっくるめた体の部分を指し、いわゆる尿が作られてから、体の外に出るまでの道筋です。そこに起こる疾患には、腎臓結石、尿路の癌、腎臓系球体の炎症、嚢胞性腎疾患などがあります。

尿路以外でも血尿の原因は発生します。血液の赤血球は腎臓を通過できませんが、赤血球が血管内で壊れてしまったとき、その中身のヘモグロビンが腎臓経由で尿に混ざります。この現象を血管内溶血と言いますが、それは赤血球の異常、人工心臓弁によりあるいは長距離の徒歩やマラソンなどで起こります。ヘモグロビンが多量に混ざると、尿の色が前述のように、コカ・コーラのような色になります。家族性血尿という原因もありますが、この場合は遺伝的なもので、特別検査したり、治療を要する疾患はありません。

以前書かせていただきましたバイタルサインに引き続き、尿の変化は比較的見つけやすいものです。そして、それが体に起こり始めた病気を示すものである可能性があります。一時的な良性のものもありますが、検査をすることにより、原因の芽を取り去り、大きな事態にならずに済むことも多いです。

非肉眼的な尿の変化は、自分では見つけられません。しかし健診などでの尿検査のような、簡単なテストでもそれを分析することができ、とても多くの体に関する情報を与えてくれます。こう考えると、尿が出るというのは有難いことですね。少なくとも体の毒素を排出してくれ、その上、体の健康状態の目安としても役立ってくれます。

2018年1月19日 金曜日 11:07

輸血の話

献血をされた事があるでしょうか?多くの方の献血のお陰で、毎日たくさんの命が助けられています。私たち医療に関わっているものは、献血のお陰で命拾いしている方々を当たり前のように見ておりますが、そうできるのも自分の血液を見ず知らずの患者さんたちのために喜んで提供してくださる方々のお陰です。

献血に関する知識、それによる安全性はどんどん向上していて、それは献血をされるボランティアの選択から始まります。その昔献血を促すため、献血をされる方々にお礼金を差し上げていたこともありました。皆様もご存知だと思いますが、そうすると献血者としてあまり好ましくない人々を呼び込んでしまうので、そのようなやり方は数十年前に廃止されました。

今は献血をするにも、とても込み入ったアンケートに答え、患者さんが献血をするだけの体力があるか、また肝炎などにかかる危険因子があるかなどを調べます。それらの審査は結構難しく、アンケートだけでも多くの候補者が献血を許されないほどです。以前、狂牛病がヨーロッパで見つかり話題になったことがありますが、その頃はヨーロッパに最近数年以内の間に住んだことがあるというだけで、アメリカでは献血者として受け入れられない状態でした。せっかく人助けをしたいという方々がたくさん門前払いされているようで心苦しいですが、それほど輸血される血液は厳しく選ばれます。

アンケートで合格しますと採決をしますが、そこで今度は血液の一部が検査に送られ、数十目の分野において調べられます。特に厳しく検査されるのは、A・B・C型肝炎、HIVです。

まだ完全ではありませんが、お陰で最近では輸血によるそれらの感染率は1/100,000以下と言われています。一生の間、100,000回輸血を受けても、感染する可能性はほとんどないという計算です。血清などの輸血に関しては、検査された血液をさらに洗浄するため、感染する確率はほとんどないと言っていいほどです。

輸血を受ける時は大抵、命に関わる危険がある時です。以前はやや危険を伴っても、生きるチャンスを得るために輸血はされてきました。しかし、最近の輸血はとても安全になりました。万が一、ご自身や身近な人が輸血が必要となった時は、主治医の先生とよく相談をして、献血者に感謝しながら受けられることをお勧めいたします。どうしても納得がいかない時は、時間が許す限り、手術などを受ける時と同じようにセカンドオピニオンを求めることも決して遠慮する必要はありません。しかし緊急事態の場合は側にいる医療関係者に頼り、輸血の安全性を思い出してください。それでは。

2017年12月18日 月曜日 13:21

人工甘味料の話

カロリーのない、お砂糖代わりに使われる人工甘味料についてよく質問されます。特に安全性についてです。発ガン性はあるのか、神経に影響するのかなどが一番多い質問です。それから、もう一つの大きな関心事は、本当にダイエットに効果があるのかという点についてです。アメリカの人口の50%以上が人工甘味料を愛用していると言われている現在でも、多くの方々が上記のような疑問や不安は持ち続けているのですね。という訳で、今回は人工甘味料の中でも需要が上位3位までを占める、サッカリン、アステルパーム、スクラロースについて、簡単にお話しさせていただきます。

サッカリンは人工甘味料として、最初に需要が世界的に拡大された化学物質です。水に溶けにくいですが、他の人工甘味料と同じく、甘みは砂糖の数百倍です。でも甘みと共に苦味もあり、味を好まない方も多いです。安全性については、1960年代に動物実験で、大量のサッカリンを注入した時に発ガン性があると指摘され、一時発売が禁止になりました。しかし研究で使われたサッカリンの量が、あまりにも現実離れするほど多かったこと、実際に発生した癌も特定のグループの動物だけだったこともあり、人間が通常使用する量での発ガン性は無いに等しいという結論に至りました。そして、1970年代から一般使用が再開されています。

アステルパームはアミノ酸の一つで、サッカリンのような癖もなく、お砂糖よりもアステルパームの味を好むファンもいるのが現実です。アメリカではNutrasweet、日本ではパルスイートの名で知られています。発ガン性についてはやはり、動物実験で大量に使用した場合、発ガン性に関連すると発表した研究論文が一度はありましたが、その有効性は十分に受け入れられず、その後の実験では発ガン性は認められていません。ただし、フェノルケトン症という遺伝性の代謝障害をお持ちの方は、アステルパームの使用は避けなければいけません。

最後にスクラロースですが、これは味も化学記号も一番お砂糖に似ています。これはアメリカでは大人気で、Splendaの名で知られています。日本ではまだ一般向けには発売されていません。安全性については色々な意見が出ていますが、科学的証明というところまで達していないのが現状です。

ダイエットにつきましては、人工甘味料は脳を刺激し食欲を旺盛にするため、肥満の原因になっているのではとの意見が強くなっています。それでも糖尿病患者さんたちが、血糖をあまり上げずに甘いものを楽しむためには有効です。神経に影響があるという意見も頻繁に聞きますが、いまのところ一般的に認められているデータはありません。最後に安全性に対する私の意見を言わせていただきますと、自然のお砂糖でもその他の栄養素でも、摂取量や使い方が極端になれば、体に害をもたらすことがしばしばです。自然のものも人口のものも、それらに対する正しい知識を持った上で、適度な量を使用することが大切だと思います。

2017年11月21日 火曜日 15:47

がん難民の話

がん難民の話日本では「がん難民」という言葉が使われるようになって、だいぶ経ちます。その定義は「医師による最初の治療方針の説明に不満を抱くか、納得できる治療方針を選べなかったがん患者」と言われていますが、一般的な方々が「がん難民」とう言葉を使う時、他にも様々な意味を持つようです。そんな中、それらの言葉を使う方々の持つ共通点は、日本でのがん治療に対する不満です。今回この課題を取り上げさせていただいた理由は、アメリカにお住まいの日本人の方々も、日本在住のご家族や友人の中に「がん難民」宣告をされている方々がいらっしゃるのではという思いからです。私自身よく相談を受けるのですが、読者の皆様も同じような相談を受けられる時、「がん難民」のことが少しでも理解していただければと、願いながら書いております。

自分が「がん難民」であると訴えておられる方々の話を聞いてみると、下記のような問題が見えてきます。閉鎖的医療、治療情報の不足、公開されない治療内容、一貫性がない治療法、緩和に対する意識の乏しさ、精神的なサポートの不足、「割り切り医療」などです。

日本の医師、そしてその他の医療関係者はとても優秀な方々が多く、人間としても素晴らしい人々であるという事を、私自身の経験から証言できます。しかし現在の医療システムは、患者やその家族の必要を満たすためには十分行き届いていないようです。例えば日本のがん患者の数は、アメリカの2分の1ですが、がん専門医の数はアメリカの10分の1もいません。アメリカのがん専門医はとても忙しく、患者さんを一日中診ているのに、計算すると日本のがん専門医はその5倍の患者数を診ないといけない事になり、考えただけでも大変さを感じられます。もちろんそのような患者の数は、がん専門医だけでは扱いきれないで、結局がん治療の訓練を特別に受けていない医師たちも治療に加わる事になり、治療の一貫性にも問題が出てくるのだと思います。

他にも問題点は多くあります。先進国であるはずの日本で、死亡率の一番高い疾患への対応が世界の標準に対し遅れをとっているのが残念です。 「がん難民」の方々のために、今何か出来るかというと、正直あまりありません。ただ、この問題がいかに重大であるかを認識し、何か日本の同胞のためにしてあげたいと願う人が一人でも増え、話し合い、考えあう事から、解決法も生まれてくるものと信じております。

2017年10月18日 水曜日 16:34

乳糖不耐症の話

ミルクやアイスクリームなどを食べるとお腹がゴロゴロと下痢気味になるので、乳製品はどうしても苦手と言われる方は少なくありませんね。これは英語ではLactose Intoleranceと呼ばれているコンディションのことを指すのですが、日本語では乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)と訳されています。乳製品を摂るとそのような状態になるため、乳製品を含んでいる食品や料理を食べることができず、病気ではないにしても、乳製品の多い欧米では食べ物を制限されてしまう困った症状だと言えるのではないでしょうか。

このような症状が出る原因は、ラクターゼという乳糖を分解する酵素が十分に分泌されないためです。ですから乳製品を摂ると消化不良が起こり、お腹にガスが溜まったり、下痢などの症状が出ます。子供は大抵の場合、ラクターゼが十分にあるのですが、成長に伴い乳製品の摂取が減るのに比例して、多くの人はラクターゼの分泌が減ります。乳製品を大人になっても大量に摂る欧米、特に北欧などを除きますと、大半の大人が乳性不耐症になっているか、その予備軍に入っているのが現状です。その中でも特に東洋系の人々は、90%以上が乳糖を十分に代謝できていないという統計が出ています。

無理をして乳製品を摂らなくても、私たちの栄養補給に問題はありません。しかし、最近の食事は日本でも欧米化されており、せっかく食べられる環境にあるのに食べられないのは残念なことです。また体が少し弱っている時などは、乳製品などを摂ると回復に役立つ場合もありますので、やはり少しは摂られる方が良いかもしれません。

それでは、乳糖不耐症の方はどのような食生活をするのが良いのでしょうか。特別な理由がなければ、上記に述べたように乳製品は摂らなくても、他の食品で十分健康を保つことはできます。実際、欧米では乳製品が必要以上に強調されているので、少々注意が必要でしょう。特に牛乳の宣伝は、強く印象に残るほど盛んにされていますが、牛乳が食生活に不可欠であるというデータはどこにもありません。ただカロリーが通常以上に必要とされる病気の時などを含む新陳代謝の激しい時などは、乳製品が効率よくカロリーやビタミンなどを吸収してくれるので重宝されています。

乳糖不耐症の方が乳製品を摂るには、いくつかの方法があります。まずは大体の食品別の乳糖の分量を知ることです。例えば、牛乳はコップ一杯で8gから11gの乳糖がありますが、同じ量のヨーグルトですと5g弱です。ですので、牛乳は苦手でもヨーグルトなら大丈夫な方も多いでしょう。その次にできることは、乳糖が既に分解されている乳製品を摂ることです。そして最後に、乳製品を摂る前に乳糖を分解するラクターゼを経口で摂取することです。そうすることにより、下痢などの症状は緩和されますので、一度お試しください。いろいろと工夫をして、楽しく健康的な食生活を送ることができますように。

2017年9月20日 水曜日 11:52

緑内障の話

この病名を聞いたことのある方は多いと思います。でも大抵の方は、それがどれほど頻繁に診断され、また大変な結果になる可能性のある病気かをご存知ないのではないでしょうか。

これは失明に至る最も大きな病気の一つです。日本では既に糖尿病による網膜症を超え、失明の一番の原因となっています。これを聞いて驚かれる方も多いと思いますが、なんと40歳以上の男女の17人に1人が、緑内障にかかっているという調査結果が出ています。

緑内障というのは、眼球の中の圧力が高くなりすぎ、眼の後ろの方にある視神経を支える血管が圧迫され血流が止まり、それによって視神経自体も圧迫され破壊されてしまう疾患です。房水(ぼうすい)という液体が眼の中にあり、それにより眼は形を保ち、また栄養素などを受け、その働きで支えられています。房水は血液のように常に循環していて、新鮮なものが眼球の中に運ばれ、古くなったものは外に出ていきます。そして房水は、眼の中の隅角という部分から排出されます。ですから、様々な理由で隅角が閉じたり狭くなったりしてしまうと、房水が排出されにくくなり、眼圧上昇につながります。

隅角が急激に詰まると、眼の痛みや頭痛が症状として現れます。その場合、適切な診断と治療が早急に必要となります。急性の隅角閉鎖ですと、眼圧が急激に上がることもしばしばで、発症から一日のうちに失明に至る場合もあります。そうなると手術などで急いで眼圧を下げる必要があります。

急性の場合とは逆に、多くの場合は自覚症状も少なく、定期的な眼の検査の時に眼圧が高くなっているのが初めて発見される場合がほとんどです。その他、患者さん自身、視野が狭まってきている事に気が付き、検査を受け発見されることもあります。どちらにしても、治療の目的は眼圧を正常値に戻し、失明を防ぐ事です。

最も簡単な治療法は、薬により房水の生産を少なくしたり、隅角の角度を緩め、房水を排出しやすくするという方法です。点眼用と内服用がありますが、使いやすさと早く効く可能性があるという事から、大抵は点眼薬が優先されます。しかしそれだけでは十分な効果が見られない事も多く、その場合は内服薬が併用されます。

薬による治療が効かなかったり、急性かつ重症のケースで一分一秒を争ったりする場合などは、手術が必要となります。レーザーによる手術が比較的簡単で、合併症なども少なく、よく使われています。しかし外科的手術がどうしても必要となる時もありますので、診断、治療法については、専門医の先生と十分に相談して下さい。眼圧の検査をする時、角膜が通常より固めの場合は、眼圧が高くなくても眼圧計が高い値を示すことがある事も覚えておいてください。

2017年8月23日 水曜日 14:02

骨粗鬆症の話

身体を支えてくれる骨格は大切ですね。骨格がしっかりしていないと、私たちは歩くどころか、立つこと、あるいは横になることすらまともに出来ませんね。当たり前のようですが、骨の健康も本当に有難いものです。骨はその頑丈さと弾性さをバランスよく保ち、活動的な体の動き、体制を可能にしてくれます。

骨がその頑丈さ、そして弾性さを失うに至る病気は色々ありますが、その中で代表的なのが骨粗鬆症です。皆様もよくご存知の通り、この疾患はお年寄りの女性に一番多く見られますが、男性にもまた比較的若い40代の方々に診断されることもしばしばです。しかし幸いと、現在はこの病気に対する理解が深まり、効果的な予防、そして治療が可能になっていますので、多くの方々が骨粗鬆症を回避できるようになりました。

今回のコラムはまず骨粗鬆症の原因について、そして予防、治療という段階でお話を進めたいと思います。まず原因ですが、もっとも影響があるのは女性の閉経にともなう、エストロゲン分泌の減少です。エストロゲンは骨の成長、維持にとても大切なホルモンですが、経口の薬や注射で補充すると乳がんの発生率を高めるので、現在では一般的には勧められていません。エストロゲン減少以外では、アルコール摂取、喫煙、体形、肉食などがあげられています。

アルコールは骨に必要な栄養素吸収の妨害をし、喫煙は骨の細胞に直接害となります。少ない運動量、痩せた体形も骨を弱くしてしまいます。動物性タンパク質は体から骨に欠かせないカルシウムを奪うので、過度の肉食は骨粗鬆症の原因となります。その他、人種なども関係があり、白人と黄色人種が比較的なりやすいです。もう一つ、治療のためステロイドや抗凝血薬のヘパリンなどを長期常用する場合、骨粗鬆症の発生率もとても高くなります。

診断にはX線や超音波を利用した検査が用いられます。初期ではあまり自覚症状はありませんが、上記のような危険因子をもたれる方は、定期的に検査をされるべきかどうかを主治医の先生と相談するようにお勧めいたします。少しでも骨に異常が疑われる方も相談してみてください。骨格に問題が出はじめたり、骨折などを起こさないうちに、診断そして治療を受けられることが理想的です。

治療としては、Fosamaxなどカルシウムを骨に引っぱっていく薬、そして弱いエストロゲンの働きを促すホルモン系の薬があります。薬の選択、使用法、副作用などに関しては、主治医と詳しく相談してください。Fosamaxなどは胃腸に影響がありますが、正しい摂取の仕方でその副作用はだいぶ改善できます。ホルモン系の薬に関しましては注意事項が多いので、特に主治医の先生とよく相談してください。

それではまた。

2017年6月21日 水曜日 13:37

外反母趾の話

外反母趾(がいはんぼし)、男性にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。しかし、女性でしたらほとんどの場合、ご自身が経験されたか、身近な方がこの疾患で苦労されているのではないでしょうか。これはまさしく、現代の生活病と言ってよいでしょう。なぜなら、ハイヒールを履くことがなければ全くと言って良いほど起こらないからです。

言うまでもなく、ハイヒールを履いていると体重が不自然に足の先端にかかります。そうなると、足の指が靴のつま先の狭まった所に押し入れられた状態になり、指が足の中心に向けて付け根から曲がるように矯正されてしまいます。これが一番分かりやすい形で現れるは足の親指とその付け根です。ひどい時は、親指が付け根から90度位の角度で中指に向けて曲がってしまい、付け根は突き出し、こぶのようになってしまいます。本当に痛々しい姿です。

このような変形は足のつま先だけの問題ではなく、体全体の問題となりうることを強調しておきます。まず足ですが、つま先や指の付け根あたりに、まめや靴擦れが出来やすくなり、血行も芳しく悪くなります。糖尿病がある方はこれだけでも一大事です。潰瘍なども出来やすくなり、感染しやすくなります。外反母趾になりますと、足のアーチにも問題が出てくるので、裸足になっても履きやすい靴を履いても、体の体重を支えにくくなり、疲れやすくなります。そうなると知らず知らずのうちに運動不足にもなります。ご存知の通り、運動不足はあらゆる面で体に問題を引き起こす原因となります。

ハイヒールというのは、足と体の体勢を美しく飾りつけるために考え出されたのだと思いますが、その不自然な形は、皮肉にも足を醜く変形させてしまいやすく、体の健康のためにもあまりお勧めできるものではありません。もちろん今の時代、他の多くの文化的な習慣を避けることが出来ないのと同様、この履きにくい靴を使う習慣も廃止するのは不可能ですね。しかし、体に無理がかかり過ぎないくらいに状況を改善することは可能ですし、健康維持のためにもそう努力するべきでしょう。

一つの予防方法として、ハイヒールを履いている時間を出来るだけ減らしたいものです。例えば運転している時、近所へ買い物に行く時、正装をしていなくても良い時などです。少し手間はかかりますが、常に履きやすい靴を持って、ハイヒールを脱いでも良い時は履き替え、「ハイヒール時間」が出来るだけ少なくなれば上出来です。外反母趾も、軽いうちは簡単な矯正と、ハイヒールを避けることで治せます。ですが重症となってしまうと、手術が必要となる場合もあります。足が変形してきたなと少しでも思った時は一度、足専門医(Podiatrist)に相談してみてください。靴擦れ、痛みなどの合併症ですが、それらの緩和や予防のための製品も今はたくさん販売されていますので、最寄りの薬局などに問い合わせてみてください。それではまた。

2017年5月19日 金曜日 14:58

認知症の話

痴呆症という言葉の代わりに、認知症という言葉が頻繁に使われるようになってから大分経ちました。平均年齢が高くなるにつれて、認知症の診断を受ける患者さんの数も増え続けるばかりです。今回のコラムは介護する側の責任という面から書いてみることにしました。

 まず、認知症の原因は色々ありますが、年齢を増すにつれて物事を忘れやすくなったとか、精神的な病のため、理解力、判断力が低下している状態などは認知症の診断の枠には入りません。現在受け入れられている認知症診断の基準というのは、一度正常であった脳機能が、後天的な脳の障害のため異常に低下することを指します。具体的に述べますと、普通は忘れない日付が分からない(少なくとも月単位)、自分の家族または友人との関係を思い出せない(見覚えあるが自分とどういう関係なのかが思い出せない)、自分の居場所がよく居る場所であるにも関わらずわからないなどです。

 認知症は、一見普通に見えても言動が尋常でないという程度の状態から、自分の周りの現状を全く把握できていない寝たきりの状態のような深刻な病状まで含まれます。深刻であれば、それを見分けることは簡単かもしれませんが、初期のうちは周りが注意していないと分からないことが多いです。症状が初期の場合でも取り返しのつかない事故を起こしてしまったり、行方不明になってしまったりすることがありますので、できるだけ早いうちに診察を受けるべきです。診断はたいてい問診によって行われ、それほど難しくはありません。臨床心理士、神経科医、精神科医などが専門的にされています。前記のような症状が見られましたら、とりあえず主治医に相談して下さい。早期診断のもう一つの大切な点は、治療可能な原因をより敏速に見つけることです。それにより認知症が改善するべき原因によるものでしたら、回復の確率が高くなります。例を挙げますと甲状腺機能低下症などです。

 介護する側の役割と責任はとても大きいです。ここで大切なのは、介護する側も自分の能力をよく知っておくことです。介護は多くの場合長期になりますので、はじめのうちに頑張り過ぎて、介護側が燃え尽き症候群などにならないように注意しなければなりません。これは笑い話のようですが、今や深刻な問題です。それではどうしたらよいのでしょうか?まず、介護を手助けするサービスや施設の資料を集めることです。ソーシャルワーカーにも、できるだけ早期に相談することです。介護を自分の家で続けるか、施設にお願いするかは、家族でよく相談しなければなりません。家で介護を続けることは患者さんにとって喜ばれる事ですが、それはそれを出来る家族メンバーが揃っていて、必要な医療器具なども使いこなせる場合です。時には施設の方が、家族にも患者さんにも良いということを忘れないで下さい。訪問看護システムや入院施設は、いくつか訪ねて納得できるところを選んで下さい。そして、多くのサポートシステムがあることも覚えておいて下さい。

2017年4月17日 月曜日 13:35

ビタミンB12欠乏症の話

ビタミンB12欠乏症と言ってもあまりピンとこない方も多いと思います。ビタミンはどれも大切ですが、このビタミンが足りなくなりますと、体の多くの機能にはっきりとその影響が見られます。このビタミンを欠乏する原因は様々で、多くの方がこの疾患で苦しまれております。今は原因がはっきりしているので治療も簡単ですが、原因の分かっていなかった1900年代の初め頃、この病気のために多くの方が亡くなりました。現在でも、ものすごく治療が簡単な病気であるのですが、診断をしっかりしないと命に関わる病気となります。

まずどのような症状が出るのでしょうか?皆さんもよくご存知の、脚気が典型的な症状の一つです。脚気というのは、反射神経が鈍る時に起こる症状です。ですので、もちろんいつもより歩きにくくなったり、走れなくなります。それ以外によく知られている神経にかかわる症状としては、足が反動などに対しての感覚が鈍ること、そしてひどくなりますと痴呆症、意識不明に至る場合もあります。

それ以外によく知られている検査結果は貧血です。貧血でも数字的にはひどいもので正常の3分の1しか血の値がないこともしばしばです。当然のことそれほどの貧血がありますと体がとてもだるく、弱く感じられます。しかし時にビタミンB12はとても足りないのに、貧血のない場合もあります。それは別のビタミンが貧血の方をカバーしてしまうからです。でもそういう時も神経関係の症状は出て、ある時は、貧血がある時よりも神経の症状が多く出るということもよくあります。

この疾患の原因として、第一にあげられるのが悪性貧血です。これは自己免疫症の一つなのですがその名の通り、昔は白血病のように恐れられていた病気です。今はビタミンを定期的に注射をするだけでも、何も問題のない病気なのですが、ビタミンB12の代謝が発見されるまでは、ほとんど確実に命を落とすと思われていたコンディションでした。私達の胃にはこのビタミンを吸収するための特別な因子を分泌する作用があるのですが、悪性貧血になりますとこの因子が分泌されなくなるため、体もこのビタミンを摂れなくなってしまいます。

もちろん、胃を摘出された方も同じような状態になります。ですので、そのような手術をされた方は必ず定期的に血中のビタミンB12の値を調べていただいて、欠乏する前に治療を受けてください。そのほか、寄生虫によるもの、胃腸にバクテリアが必要以上に繁殖されてしまう場合などが、ビタミン吸収を妨げるものとして認められています。それから、ビタミンB12は動物性の食物にあるビタミンですので、極度のベジタリアンの方々はビタミン剤をサプリメントとして摂ることをお勧めいたします。牛乳や卵はビタミンB12を豊富に含んでいるので、それらを摂られていれば食習慣のため欠乏することはまずないでしょう。

それでは、またこの次までバランスの良い生活を。

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プロフィール

Dr. Yutaka Niihara(新原豊), MD, MPH

1959年生まれ。東京都出身。
ロマ・リンダ大学宗教学科卒、同大学医学部卒。
ハーバード大学公衆衛生学修士卒。
Emmaus Life Sciences, Inc. President and CEO
UCLA 医学部教授(University of California, Los Angeles Harbor-UCLA Medical Center)

エマウス・メディカル・ジャパン株式会社

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