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Dr.新原の健康講座

2018年7月20日 金曜日 09:43

貧血の話

よく感じるのですが、漢字を取り入れた日本語は、読む人にとても優しい言葉だと感じます。この貧血という単語も医学を知らずとも、字を見ればどのような状態を示すのか、なんとなく伝わってきます。ところでこの貧血、とても種類が多いのです。この紙面ですべてカバーすることは出来ませんが、今日も簡単にですが主要な種類についてお話させていただき、どのような症状に特に注意すべきかを考えてみましょう。

私たちの細胞ひとつひとつは、血液の循環によって支えられています。それは酸素や栄養素の運搬、供給、そして排出物の排除、さらに免疫、止血などに関わっており、組織や臓器が正常に働くためには欠かせないものです。血液は大きく分けて、赤血球、白血球、血小板、そして血漿からできています。医学的に貧血と言いますと、血液の赤血球の部分が低下することを指します。

貧血でまず代表的なのは、鉄分欠乏症貧血で、これは特に子供、女性に多く見られます。赤血球が機能するためには鉄分が必要とされるのですが、急激な成長や慢性の出血などにより、体内の鉄分が足りなくなります。そうなりますと赤血球が製造されにくくなり、貧血が起こります。治療は鉄分を摂取する事で大抵の場合良くなるのですが、何が理由で鉄分が減ったかを追求する必要があります。胃炎や胃腸の腫瘍が、慢性出血の原因になっているかどうかを調べる必要が出てくる場合も多いです。ビタミンB12、また葉酸の欠乏による貧血もよく聞かれる種類のひとつです。大切なのは、ビタミンを含めたバランスの良い栄養を摂り続けることです。しかし悪性貧血という名の貧血になってしまいますと、ビタミンB12を吸収するのが難しくなります。その場合、注射による供給が必要となります。胃の摘出手術をされた方なども、ビタミンB12は吸収しにくくなっておりますので、主治医の先生に、数ヶ月に一度は必ず血液の状態を診ていただき、必要であれば注射による治療を受けて下さい。

この他貧血の種類は、腎不全によるもの、慢性的な炎症によるもの、甲状腺の異常によるもの、大量の出血によるもの、そして白血病をはじめとするあらゆる骨髄の病気によるものがあります。正しい検査によって、それらの診断は可能です。

目まい、息切れ、動悸、慢性的な体のだるさなどは、貧血の症状でもあります。それらの症状が出ましたら、出来るだけ早く検査をされます事をお勧めいたします。万が一、それらの症状が急にひどくなった場合は、救急車を呼ぶことを考えて下さい。輸血がすぐに必要となる場合もありますが、命には代えられません。それではまた。

2018年5月18日 金曜日 13:42

レーシックの話

レーシックの手術を受けられる方の数が多くなってきましたね。近視で眼鏡やコンタクトが必要だった方々が手術を受けたその日から、肉眼での視力が正常、またはそれに近くなるとは奇跡の治療にも思えます。最近はラジオや雑誌で頻繁に宣伝されていますし、宣伝の中の患者さんの証言や、お医者さんのされた手術の回数などを聞きますと、少しお金がかかることの他は、何の損もない得ばかりの魅力的な投資とも思えるかもしれません。確かに素晴らしい要素の多いレーシックなのですが、やはり手術である限り、合併症、思わしくない術後の経験、レーシックを受けてはいけない要因などを心得ておかなければなりません。

そこで今回はレーシックとはどのような手術なのか、そしてどのような点を注意しなければいけないかをお話してみます。

まず、レーシックの手術の説明です。近視、遠視、そして乱視は光を屈折する角膜の曲率に影響されて起こります。そしてレーシックというのは、レーザーでこの角膜を削りながら、曲率を操作する手術です。例えば近視ですと、この曲率が上がりすぎているので、角膜の中央を削り平らにすることにより、視力を矯正します。どちらにしろレーザーを使い角膜を削ることを要するので、何度も受けられる手術ではありません。そして角膜の薄い方は、削る部分が十分にないため、受けることができません。まだ角膜が成長している18歳未満の子供も受けてはいけません。

この手術のもう一つの大切な部分は、レーザーを使う前に角膜の表面を薄くはがし、フラップを作る過程です。最後にこのフラップは削られた角膜の上に戻されます。そしてこのフラップを元の位置に戻すことがとても大切で、ずれたりしますと視力に大きな影響があります。

次にレーシックによる結果ですが、視力はコンタクトや眼鏡で矯正された以上にはなりません。そして、どうしても色の差、光と影のコントラストへの感覚が薄くなり、夕方など視力が下がり気味です。角膜が薄くなるため、天候などの変化でも視力が変動しやすくなります。まぶしさも術前と比べると強く感じられるようになり、外ではサングラスが必需品となる場合も多いです。ドライアイも術後よくうったえられます。最後に、矯正の度が過ぎますと、近視の治療の結果、遠視になってしまったなどの問題も出てきます。

このほかにもレーシックによる問題は多くあります。ですけれども幸いと大半の方々は、結果に満足されているようです。少しぐらいの合併症も、肉眼で生活できることと比べると、十分価値のあるものとして受け入れられているようです。しかしこの「すばらしい」レーシックも、受けるべきかどうか思考中の方は、注意するべきことをわきまえた上で、手術を受けるかどうかをよく専門医と相談した上で、判断をくだされるようお勧めいたします。

2018年4月19日 木曜日 11:00

疲労骨折の話

「疲労骨折による故障が理由で、運動選手が休暇を必要とする」などと時々聞きます。この骨折はストレス骨折とも言われています。ある何かの出来事のために起きる一般的な骨折とは違い、特徴として骨の一部に運動などで繰り返し負担をかけるため、少しずつ骨が壊れるものです。症状は、他の骨折と同じで痛みがありますが、多くの場合症状が出る頃には、レントゲンに写るほどのひびが入っています。骨折の起こりやすい部分は、体の重みのかかる腰の辺り、足の膝から足首にかけて、そして足の指の付け根よりやや下の辺りです。

この疾患の難しいところは、症状があまりはっきりと現れないことです。足の骨が影響している場合、少し歩くぐらいではそれほど痛みを感じないこともしばしばです。しかし、走り出したりすると徐々に痛みがひどくなり、走り終わった時に最もひどい痛みが始まると言われています。このような痛みを感じるようになったら、運動選手などは一刻も早く診察を受け、治療に専念すべきです。疲労骨折の初期は治りやすく、合併症もほとんどありませんが、それを放っておくなどして痛みを我慢し無理を続けると、選手生命が危うくなる恐れがあります。言うまでもありませんが、これは運動選手だけに限ったことではありません。外での仕事が多い方、体の一箇所に連続的に負担がかかるなどの力仕事の方、健康のためにジョギングや散歩を定期的に行っている方など、それぞれが疲労骨折を心得ておくべきでしょう。

治療として大切なのは、骨折している骨に対する負担をとりあえず減らすことです。時にはギブスなど骨を固定させることが必要となる場合もあります。足に骨折がある場合、できるだけ足の痛みを和らげられる靴を選ぶことが大切です。靴が足の骨折の負担を補ってくれる良いものであれば、軽症の疲労骨折なら大抵の場合、軽く歩いたりするのは可能です。

とにかく重要なのは、痛みを感じるような状態になったらそれを無視せず、痛みの原因をきちんと調べることです。もし上記のような痛みがある場合は、主治医の診察を受け、レントゲン写真を撮ってもらってください。時には骨折が見つかりにくく、特殊な検査が必要となる場合もあります。痛みを無視したために骨折が進むと、手術を要することもあるので気をつけてください。合併症が起きると他の疾患と同じように、事態をより深刻にしてしまいます。

予防としては、これは逆説にも聞こえますが、疲労骨折を起こしやすい骨に適度のストレスを繰り返しかけることです。そうすることにより骨が強くなります。骨を支える筋肉をつくるための運動も大切です。それではまた。

2018年3月19日 月曜日 10:21

時差ボケの話

何事をするにも世界を視野に入れて多くの方々が動いているように感じられます。仕事、休暇等の移動も毎年、平均距離が長くなり、旅行期間が短くなり、頻度が増え続けているのではないでしょうか。

時差ボケが起こるのは私達体内に時計が有るからです。この体内時計が寝起などに必要なホルモンの分泌される時間をコントロールしてくれ、そのおかげで私達の生活のサイクルが作られています。面白い事にこの時計の一日は実際の一日の時間数の24時間より一時間長く25時間です。しかし毎日私達の生活習慣のおかげで1時間リセットされています。この一時間違いが意外に大切で、時差のある所に移ったり、生活習慣のスケジュールを仕事の都合で変えないといけない時にそれに対応しやすくしているようです。どう言う事かといいますと、世界で一番時差のある場所でも比例差は12時間です。つまりどんな遠くへ移ったとしても約12日で体内時計は新しい土地の時間に慣れると言う事です。又一時間長いため、東から西に動く方がその逆よりも比例時間が遅くなるので負担が少ないようです。

時差のある場所に移った時、まず大切なのは日のあたる時間に軽い運動をする事です。昼寝も良いですが部屋はあまり暗くせず休まれ、少し疲れが取れたら思い切って外に出て日に当たってください。太陽の光は体内時計のリセットにとても大切であることが分かっています。西から東へ移り、夜寝つけない時は少量の睡眠薬を処方して頂くのも一つの方法です。反対に東から西へ移ると朝が早くなります。この時は睡眠薬はお勧めできません。それよりも朝の早い時間を工夫して使うことが良いと思います。朝2時ごろから起きていても、たいていの場合日中は問題なく生活できるはずです。どちらにしても疲れを感じるとき、休みを上手く取るようにすることと日中に適当な運動することを覚えてください。お酒タバコを控えられ食事も軽くバランスよくお取りください。

地球の裏まで何日もかけて移動するなら、体内時計が目的地に着くまでに丁度良く調整されるのですが、最近では動くスピードが早くなり、一日一時間ぐらいの修正ではとてもついていけないものです。そんな社会になった今、それについていくために工夫しないといけません。時差ボケとは言え、そのために事故が起きたり、大切な決断の判断を間違えたり、心臓などの臓器に負担がかかるなどきちんと対応を考えないといけない現象です。

それでは又この次まで。体内時計も大切にしてあげてください。

2018年2月19日 月曜日 10:04

血尿の話

尿の色がおかしいなと思ったことはありませんでしょうか。尿の色は、透明からやや黄色がかったものが正常ですが、赤っぽかったり、コカ・コーラのように黒っぽかったり、時には茶色くなる場合もあります。当たり前のように見ている尿ですが、尿の色、中身を調べることにより健康状態がわかります。というわけで、今回は尿の病的変化の一つである、血尿についてお話してみましょう。

血尿というと、どうしても赤く染まった尿を想像してしまいますが、実はその大半は肉眼では見えない、少量の血を含んだものです。そうとは言え、肉眼で見えるものも少なくありません。そして、非肉眼的なものを合わせると、その頻度は私たちが考えている以上の数字です。ウィキペディアによりますと、「健康診断による潜血陽性率は大学生で4~5%、40代は男6%女10%、60代は男11%女24%、80代以上は男17%女29%である」というデータが表示されています。

原因としては様々な疾患が考えられますが、膀胱炎の占める比率はとても高いです。膀胱炎になりますと、炎症のため膀胱の粘膜から血が滲み出やすくなるからです。大抵の場合は非肉眼的ですが、尿の色がやけに濃くなったように見える場合もあります。そのほかに原因として考えられるのは、その他の尿路の疾患です。尿路というのは、腎臓、尿管、膀胱、尿道をひっくるめた体の部分を指し、いわゆる尿が作られてから、体の外に出るまでの道筋です。そこに起こる疾患には、腎臓結石、尿路の癌、腎臓系球体の炎症、嚢胞性腎疾患などがあります。

尿路以外でも血尿の原因は発生します。血液の赤血球は腎臓を通過できませんが、赤血球が血管内で壊れてしまったとき、その中身のヘモグロビンが腎臓経由で尿に混ざります。この現象を血管内溶血と言いますが、それは赤血球の異常、人工心臓弁によりあるいは長距離の徒歩やマラソンなどで起こります。ヘモグロビンが多量に混ざると、尿の色が前述のように、コカ・コーラのような色になります。家族性血尿という原因もありますが、この場合は遺伝的なもので、特別検査したり、治療を要する疾患はありません。

以前書かせていただきましたバイタルサインに引き続き、尿の変化は比較的見つけやすいものです。そして、それが体に起こり始めた病気を示すものである可能性があります。一時的な良性のものもありますが、検査をすることにより、原因の芽を取り去り、大きな事態にならずに済むことも多いです。

非肉眼的な尿の変化は、自分では見つけられません。しかし健診などでの尿検査のような、簡単なテストでもそれを分析することができ、とても多くの体に関する情報を与えてくれます。こう考えると、尿が出るというのは有難いことですね。少なくとも体の毒素を排出してくれ、その上、体の健康状態の目安としても役立ってくれます。

2018年1月19日 金曜日 11:07

輸血の話

献血をされた事があるでしょうか?多くの方の献血のお陰で、毎日たくさんの命が助けられています。私たち医療に関わっているものは、献血のお陰で命拾いしている方々を当たり前のように見ておりますが、そうできるのも自分の血液を見ず知らずの患者さんたちのために喜んで提供してくださる方々のお陰です。

献血に関する知識、それによる安全性はどんどん向上していて、それは献血をされるボランティアの選択から始まります。その昔献血を促すため、献血をされる方々にお礼金を差し上げていたこともありました。皆様もご存知だと思いますが、そうすると献血者としてあまり好ましくない人々を呼び込んでしまうので、そのようなやり方は数十年前に廃止されました。

今は献血をするにも、とても込み入ったアンケートに答え、患者さんが献血をするだけの体力があるか、また肝炎などにかかる危険因子があるかなどを調べます。それらの審査は結構難しく、アンケートだけでも多くの候補者が献血を許されないほどです。以前、狂牛病がヨーロッパで見つかり話題になったことがありますが、その頃はヨーロッパに最近数年以内の間に住んだことがあるというだけで、アメリカでは献血者として受け入れられない状態でした。せっかく人助けをしたいという方々がたくさん門前払いされているようで心苦しいですが、それほど輸血される血液は厳しく選ばれます。

アンケートで合格しますと採決をしますが、そこで今度は血液の一部が検査に送られ、数十目の分野において調べられます。特に厳しく検査されるのは、A・B・C型肝炎、HIVです。

まだ完全ではありませんが、お陰で最近では輸血によるそれらの感染率は1/100,000以下と言われています。一生の間、100,000回輸血を受けても、感染する可能性はほとんどないという計算です。血清などの輸血に関しては、検査された血液をさらに洗浄するため、感染する確率はほとんどないと言っていいほどです。

輸血を受ける時は大抵、命に関わる危険がある時です。以前はやや危険を伴っても、生きるチャンスを得るために輸血はされてきました。しかし、最近の輸血はとても安全になりました。万が一、ご自身や身近な人が輸血が必要となった時は、主治医の先生とよく相談をして、献血者に感謝しながら受けられることをお勧めいたします。どうしても納得がいかない時は、時間が許す限り、手術などを受ける時と同じようにセカンドオピニオンを求めることも決して遠慮する必要はありません。しかし緊急事態の場合は側にいる医療関係者に頼り、輸血の安全性を思い出してください。それでは。

2017年12月18日 月曜日 13:21

人工甘味料の話

カロリーのない、お砂糖代わりに使われる人工甘味料についてよく質問されます。特に安全性についてです。発ガン性はあるのか、神経に影響するのかなどが一番多い質問です。それから、もう一つの大きな関心事は、本当にダイエットに効果があるのかという点についてです。アメリカの人口の50%以上が人工甘味料を愛用していると言われている現在でも、多くの方々が上記のような疑問や不安は持ち続けているのですね。という訳で、今回は人工甘味料の中でも需要が上位3位までを占める、サッカリン、アステルパーム、スクラロースについて、簡単にお話しさせていただきます。

サッカリンは人工甘味料として、最初に需要が世界的に拡大された化学物質です。水に溶けにくいですが、他の人工甘味料と同じく、甘みは砂糖の数百倍です。でも甘みと共に苦味もあり、味を好まない方も多いです。安全性については、1960年代に動物実験で、大量のサッカリンを注入した時に発ガン性があると指摘され、一時発売が禁止になりました。しかし研究で使われたサッカリンの量が、あまりにも現実離れするほど多かったこと、実際に発生した癌も特定のグループの動物だけだったこともあり、人間が通常使用する量での発ガン性は無いに等しいという結論に至りました。そして、1970年代から一般使用が再開されています。

アステルパームはアミノ酸の一つで、サッカリンのような癖もなく、お砂糖よりもアステルパームの味を好むファンもいるのが現実です。アメリカではNutrasweet、日本ではパルスイートの名で知られています。発ガン性についてはやはり、動物実験で大量に使用した場合、発ガン性に関連すると発表した研究論文が一度はありましたが、その有効性は十分に受け入れられず、その後の実験では発ガン性は認められていません。ただし、フェノルケトン症という遺伝性の代謝障害をお持ちの方は、アステルパームの使用は避けなければいけません。

最後にスクラロースですが、これは味も化学記号も一番お砂糖に似ています。これはアメリカでは大人気で、Splendaの名で知られています。日本ではまだ一般向けには発売されていません。安全性については色々な意見が出ていますが、科学的証明というところまで達していないのが現状です。

ダイエットにつきましては、人工甘味料は脳を刺激し食欲を旺盛にするため、肥満の原因になっているのではとの意見が強くなっています。それでも糖尿病患者さんたちが、血糖をあまり上げずに甘いものを楽しむためには有効です。神経に影響があるという意見も頻繁に聞きますが、いまのところ一般的に認められているデータはありません。最後に安全性に対する私の意見を言わせていただきますと、自然のお砂糖でもその他の栄養素でも、摂取量や使い方が極端になれば、体に害をもたらすことがしばしばです。自然のものも人口のものも、それらに対する正しい知識を持った上で、適度な量を使用することが大切だと思います。

2017年11月21日 火曜日 15:47

がん難民の話

がん難民の話日本では「がん難民」という言葉が使われるようになって、だいぶ経ちます。その定義は「医師による最初の治療方針の説明に不満を抱くか、納得できる治療方針を選べなかったがん患者」と言われていますが、一般的な方々が「がん難民」とう言葉を使う時、他にも様々な意味を持つようです。そんな中、それらの言葉を使う方々の持つ共通点は、日本でのがん治療に対する不満です。今回この課題を取り上げさせていただいた理由は、アメリカにお住まいの日本人の方々も、日本在住のご家族や友人の中に「がん難民」宣告をされている方々がいらっしゃるのではという思いからです。私自身よく相談を受けるのですが、読者の皆様も同じような相談を受けられる時、「がん難民」のことが少しでも理解していただければと、願いながら書いております。

自分が「がん難民」であると訴えておられる方々の話を聞いてみると、下記のような問題が見えてきます。閉鎖的医療、治療情報の不足、公開されない治療内容、一貫性がない治療法、緩和に対する意識の乏しさ、精神的なサポートの不足、「割り切り医療」などです。

日本の医師、そしてその他の医療関係者はとても優秀な方々が多く、人間としても素晴らしい人々であるという事を、私自身の経験から証言できます。しかし現在の医療システムは、患者やその家族の必要を満たすためには十分行き届いていないようです。例えば日本のがん患者の数は、アメリカの2分の1ですが、がん専門医の数はアメリカの10分の1もいません。アメリカのがん専門医はとても忙しく、患者さんを一日中診ているのに、計算すると日本のがん専門医はその5倍の患者数を診ないといけない事になり、考えただけでも大変さを感じられます。もちろんそのような患者の数は、がん専門医だけでは扱いきれないで、結局がん治療の訓練を特別に受けていない医師たちも治療に加わる事になり、治療の一貫性にも問題が出てくるのだと思います。

他にも問題点は多くあります。先進国であるはずの日本で、死亡率の一番高い疾患への対応が世界の標準に対し遅れをとっているのが残念です。 「がん難民」の方々のために、今何か出来るかというと、正直あまりありません。ただ、この問題がいかに重大であるかを認識し、何か日本の同胞のためにしてあげたいと願う人が一人でも増え、話し合い、考えあう事から、解決法も生まれてくるものと信じております。

2017年10月18日 水曜日 16:34

乳糖不耐症の話

ミルクやアイスクリームなどを食べるとお腹がゴロゴロと下痢気味になるので、乳製品はどうしても苦手と言われる方は少なくありませんね。これは英語ではLactose Intoleranceと呼ばれているコンディションのことを指すのですが、日本語では乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)と訳されています。乳製品を摂るとそのような状態になるため、乳製品を含んでいる食品や料理を食べることができず、病気ではないにしても、乳製品の多い欧米では食べ物を制限されてしまう困った症状だと言えるのではないでしょうか。

このような症状が出る原因は、ラクターゼという乳糖を分解する酵素が十分に分泌されないためです。ですから乳製品を摂ると消化不良が起こり、お腹にガスが溜まったり、下痢などの症状が出ます。子供は大抵の場合、ラクターゼが十分にあるのですが、成長に伴い乳製品の摂取が減るのに比例して、多くの人はラクターゼの分泌が減ります。乳製品を大人になっても大量に摂る欧米、特に北欧などを除きますと、大半の大人が乳性不耐症になっているか、その予備軍に入っているのが現状です。その中でも特に東洋系の人々は、90%以上が乳糖を十分に代謝できていないという統計が出ています。

無理をして乳製品を摂らなくても、私たちの栄養補給に問題はありません。しかし、最近の食事は日本でも欧米化されており、せっかく食べられる環境にあるのに食べられないのは残念なことです。また体が少し弱っている時などは、乳製品などを摂ると回復に役立つ場合もありますので、やはり少しは摂られる方が良いかもしれません。

それでは、乳糖不耐症の方はどのような食生活をするのが良いのでしょうか。特別な理由がなければ、上記に述べたように乳製品は摂らなくても、他の食品で十分健康を保つことはできます。実際、欧米では乳製品が必要以上に強調されているので、少々注意が必要でしょう。特に牛乳の宣伝は、強く印象に残るほど盛んにされていますが、牛乳が食生活に不可欠であるというデータはどこにもありません。ただカロリーが通常以上に必要とされる病気の時などを含む新陳代謝の激しい時などは、乳製品が効率よくカロリーやビタミンなどを吸収してくれるので重宝されています。

乳糖不耐症の方が乳製品を摂るには、いくつかの方法があります。まずは大体の食品別の乳糖の分量を知ることです。例えば、牛乳はコップ一杯で8gから11gの乳糖がありますが、同じ量のヨーグルトですと5g弱です。ですので、牛乳は苦手でもヨーグルトなら大丈夫な方も多いでしょう。その次にできることは、乳糖が既に分解されている乳製品を摂ることです。そして最後に、乳製品を摂る前に乳糖を分解するラクターゼを経口で摂取することです。そうすることにより、下痢などの症状は緩和されますので、一度お試しください。いろいろと工夫をして、楽しく健康的な食生活を送ることができますように。

2017年9月20日 水曜日 11:52

緑内障の話

この病名を聞いたことのある方は多いと思います。でも大抵の方は、それがどれほど頻繁に診断され、また大変な結果になる可能性のある病気かをご存知ないのではないでしょうか。

これは失明に至る最も大きな病気の一つです。日本では既に糖尿病による網膜症を超え、失明の一番の原因となっています。これを聞いて驚かれる方も多いと思いますが、なんと40歳以上の男女の17人に1人が、緑内障にかかっているという調査結果が出ています。

緑内障というのは、眼球の中の圧力が高くなりすぎ、眼の後ろの方にある視神経を支える血管が圧迫され血流が止まり、それによって視神経自体も圧迫され破壊されてしまう疾患です。房水(ぼうすい)という液体が眼の中にあり、それにより眼は形を保ち、また栄養素などを受け、その働きで支えられています。房水は血液のように常に循環していて、新鮮なものが眼球の中に運ばれ、古くなったものは外に出ていきます。そして房水は、眼の中の隅角という部分から排出されます。ですから、様々な理由で隅角が閉じたり狭くなったりしてしまうと、房水が排出されにくくなり、眼圧上昇につながります。

隅角が急激に詰まると、眼の痛みや頭痛が症状として現れます。その場合、適切な診断と治療が早急に必要となります。急性の隅角閉鎖ですと、眼圧が急激に上がることもしばしばで、発症から一日のうちに失明に至る場合もあります。そうなると手術などで急いで眼圧を下げる必要があります。

急性の場合とは逆に、多くの場合は自覚症状も少なく、定期的な眼の検査の時に眼圧が高くなっているのが初めて発見される場合がほとんどです。その他、患者さん自身、視野が狭まってきている事に気が付き、検査を受け発見されることもあります。どちらにしても、治療の目的は眼圧を正常値に戻し、失明を防ぐ事です。

最も簡単な治療法は、薬により房水の生産を少なくしたり、隅角の角度を緩め、房水を排出しやすくするという方法です。点眼用と内服用がありますが、使いやすさと早く効く可能性があるという事から、大抵は点眼薬が優先されます。しかしそれだけでは十分な効果が見られない事も多く、その場合は内服薬が併用されます。

薬による治療が効かなかったり、急性かつ重症のケースで一分一秒を争ったりする場合などは、手術が必要となります。レーザーによる手術が比較的簡単で、合併症なども少なく、よく使われています。しかし外科的手術がどうしても必要となる時もありますので、診断、治療法については、専門医の先生と十分に相談して下さい。眼圧の検査をする時、角膜が通常より固めの場合は、眼圧が高くなくても眼圧計が高い値を示すことがある事も覚えておいてください。

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プロフィール

Dr. Yutaka Niihara(新原豊), MD, MPH

1959年生まれ。東京都出身。
ロマ・リンダ大学宗教学科卒、同大学医学部卒。
ハーバード大学公衆衛生学修士卒。
Emmaus Life Sciences, Inc. President and CEO
UCLA 医学部教授(University of California, Los Angeles Harbor-UCLA Medical Center)

エマウス・メディカル・ジャパン株式会社

113-0033 東京都文京区本郷2-20-11 石飛ビル 1F TEL:03-6801-8250 / FAX:03-6801-6166
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